(注1)特許庁も、平成28年度に中小企業知財金融促進事業(知的財産評価書事業)の実施を予定しています。

 

 

 

(注2)当事務所は日本弁理士会知的財産価値評価推進センターのメンバーとして、2015年度の日本知財学会における発表の実績があります。黒田他「スコアリング型DCF法を用いた特許権模擬評価の事例」、日本知財学会主催第13回年次学術研究発表会(講演番号2D4)

知財価値の評価

 企業や事業の合併・買収や企業に対する出資又は融資の判断材料とするため、企業の資産価値や事業価値の評価が行われます。このような評価は、伝統的に不動産等の有形資産を主な対象として行われてきました。最近のボーダーレス化したテンポの早い産業・経済の状況を考えれば、有形資産の静的な評価だけでなく、キャッシュを稼ぎ出す企業の力にフォーカスを合わせたいわば動的な評価も必要のように思われます(注1)。

 しかしそのような企業の実力の評価は、特に中小企業の場合、「経営者の人柄」とか、「社内の風通しの良さ」とか、結局何も具体性のない抽象的なことばの羅列に終始することがままあります。そこで注目されるのが、特許、意匠、商標等の知的財産権(産業財産権)の評価です。これらの権利は無体財産権であっても、特許庁の審査を経て定まった輪郭・範囲を備え、事業に活用される権利はキャッシュの源の一つとして働きます。

 特許権や意匠権が事業に活用されていれば(又は将来の具体的な事業計画があれば)、

(1)その事業がこれから稼ぐと期待されるキャッシュの額を現在価値に換算する、
(2)事業に占める特許権や意匠権の重みを評価する、及び
(3)権利の法律的・技術的価値を、
他の類似する技術や権利との比較を通して判断する

というプロセスを経て、権利の金銭的な価値を評価することができます。このようにして評価された権利の金銭的価値に基づいて、金融機関に対し融資や出資の判断材料を提供することや、権利移転又は実施許諾等の交渉の局面における基本データとして活用することができます。

 既有の知的財産権が実際の事業との関連においてどの程度の金銭的価値を持つのか把握しておくことは、各種の事業判断・経営判断において非常に有用です。どうぞご相談ください(注2)。